「推定する」と「みなす」の違いについて

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「推定する」「みなす」。日常生活ではどのように使われているでしょうか。

「推定する」は、映画なんかでハリソンフォード主演の『推定無罪』というものがあったり、年齢が良く分からない場合は「推定何歳」といったように使っています。意味は何となくお分かりですね。

すい‐てい【推定】
[名](スル)
1 ある事実を手がかりにして、おしはかって決めること。「出火の原因を―する」「―人口」
2 法律で、ある事実または法律関係が明瞭でない場合に、一応一定の状態にあるものとして判断を下すこと。

提供元:「デジタル大辞泉」より

「みなす」は、私はあんまり使わないので思いつかなかったです。

み‐な・す【見做す/看做す】
[動サ五(四)]
1 仮にそうと見る。そうでないものをそうとする。仮定する。「雪を花と―・す」
2 判断してそうと決める。「返事のない者は欠席と―・す」
3 法律で、ある事物と性質の異なる他の事物を、一定の法律関係について同一視し、同じ法律効果を生じさせる。「未成年者が婚姻すれば成年に達したと―・される」
提供元:「デジタル大辞泉」より

この「推定する」と「みなす」にも、法令独特のルールが適用されています。これらは似ているようで、大きく性質を異にしています。今回も条文を例に挙げてみていきましょう。

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 推定する

社労士試験の勉強中に、労働者災害補償保険法十条で遭遇するこの言葉。

第十条  船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となつた際現にその船舶に乗つていた労働者若しくは船舶に乗つていてその船舶の航行中に行方不明となつた労働者の生死が三箇月間わからない場合又はこれらの労働者の死亡が三箇月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期がわからない場合には、遺族補償給付、葬祭料、遺族給付及び葬祭給付の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となつた日又は労働者が行方不明となつた日に、当該労働者は、死亡したものと推定する。航空機が墜落し、滅失し、若しくは行方不明となつた際現にその航空機に乗つていた労働者若しくは航空機に乗つていてその航空機の航行中行方不明となつた労働者の生死が三箇月間わからない場合又はこれらの労働者の死亡が三箇月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期がわからない場合にも、同様とする。

船舶の沈没、飛行機の墜落で行方不明になった際の、労働者の死亡の推定について規定されています。

残された被災労働者の遺族の迅速な生活支援を図るべく、「推定する」が用いられています。この遺族への給付を行うには、本来、事故及び死亡の事実を確認しなければいけませんが、その事実確認には時間と手数が必要になり、残された家族を素早く援助することはとても難しくなります。

そこで、手間のかかる事実確認を簡略化する手立てが使われます。「推定する」は、船舶事故や墜落事故があり、亡くなったものとして推認をするときに使われるのです。

「推定する」ことで、例えば、遺族に対して出来る限り早く遺族補償給付などが支払われるようになるんですね。

ただ、推測しているだけなので、推定している事実と異なる事実があると立証された場合には覆る可能性は残っています。行方不明になっていた父ちゃんが、実は生きていた!とかですね。こうした場合は、真実に基づいて処理がなされます。

みなす

労働基準法十八条の「強制貯金」の4項でみてみましょう。

使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、貯蓄金の管理が労働者の預金の受入であるときは、利子をつけなければならない。この 場合において、その利子が、金融機関の受け入れる預金の利率を考慮して厚生労働省令で定める利率による利子を下るときは、その厚生労働省令で定める利率に よる利子をつけたものとみなす

任意の社内預金の利率について定めた条文です。労働基準法ですから、利子の最低基準について規定しているんですね。利率の最低ラインは厚生労働省令で定められており、現在は5厘(0.5%)です。
(参考:労働基準法第十八条第四項の規定に基づき使用者が労働者の預金を受け入れる場合の利率を定める省令 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S27/S27F04101000024.html)

もし、使用者が省令の利率「5厘」を下回る利率を定めた場合、労働基準法の効力により無効となります。そして、無効となった部分を労働基準法の定める最低基準をあてがうことになりますが、ここでは厚生労働省令の「5厘」がそこにあてはまります。

つまり、使用者が定めた最低基準を下回る利率がかき消され、異なる省令の利率が取り扱われるように成ります。異なる性質のものが同質のものとして処理されるわけです。

果たして、「みなす」とは、異なる性質のものを同質のものと同様として取り扱う法律用語です。一度、同質のものと確定し、処理したことは覆ることはありません

まとめ

長々とみてきましたが、結局のところ

  • 「推定する」は覆る可能性がある
  • 「みなす」は覆らない

以上のことを知っておけば、社労士試験で困ることは何もありません。

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